人気ワードYaiba万能片刃銀座包丁研ぎ修理砥石

初めてのきっかけなんてあっけなくくるものだ。
私もそうだった。結婚してから料理を始めたし。だって、しないと大事な旦那様倒れちゃう。共働きだから、週末にはぐったり。正直、忙しすぎて料理に時間を割く余裕がなかったけど。たまには二人で美味しいもの食べたり。街で見つけたちょっとお高い食材を試したり。

そんな生活で良かったけど。そうはいかないかなと真剣に考えるようになったのは、出産したから。口から入る全てのものが身体に影響すると改めて認識した。生きていくためになんでもいいと簡単に片付けるより、少しでも身体にいいものを取り入れたい。そして、できるなら心から美味しいと食材に感謝し、新しい家族と食事を楽しみたい。

「で、なんで包丁?」
「だからさ。切れる包丁使えば食材も細胞レベルで変わるって」
「それ、どこ情報だよ。AIとかいうなよ」

子供の離乳食が始まった。今はカボチャやお芋が多いけど、これからお肉やお魚も食べるようになる。
「スーパーのお安い柵も刺身包丁を使うと料亭レベルに上がるらしいよ。試す価値あるよね、そう思わない?」
一生使えるからコスパもいいと夫を説得して、刺身包丁を購入した。

實光刃物の刺身包丁を箱から取り出す

箱を開けた瞬間。冷たく、静かに、刃が現れた。

そう、きっかけなんてある日突然舞い降りるもの。

これまでも、柵を購入してお刺身は食していたけど、ステンレスの三徳包丁で乗り切っていた。切れないから押しつぶしてるし、無理に切りつけるから身もバラバラになる。美しい一切れになるはずが、細切れに近い外見。

「Youtubeとか見て、練習した方がいいのでは?」
「えー、何で練習するの?お刺身切りたいのに、お大根で練習とかわけわかんない」

夫は最初の入刀式を体験したそうだったが、ここは譲れない。刺身包丁を提案したのは私なのだから!

「いきます!」

初めてもつ刺身包丁。初心者用にと24cmの長さにした。なんとか使いこなせそう。
初めてのまあるい栗型のハンドル。手の中にすっぽり収まり安定感がいい。
かなり前に重心があるような気がするけど、押すのではなく、引くのだと理解すればこの構造自体も納得だ。

「うううんんん、ドキドキする!」
「前置き長すぎ。柵が汗かき始めるから早く」

急かさないでと夫に心でどつく。
御意見番の夫を無視して、最初の一振り。

「これぐらい?これぐらいの厚さでいい?」
「いや、なんか厚くない?もう少し薄くしたら?」

包丁を何度も往復させずに、一度に一気に引くのだと頭ではわかってたけど。
初めての一刀は厚さ2cmのマグロさん。

「すごーーーーーい。何これ!!!怖すぎ!切れすぎでしょ」
「もう少し薄めに引くね」

子供も何事かと私をガン見している。いつもは大好きなYoutubeを見せて子供のご機嫌をとっているが、今は、この瞬間は、集中したい。派手な英語の歌は聞きたくない。

そのまま一気にマグロの柵を切り進めた。

一度に一気に引く。刺身包丁の切れ味が、マグロの断面を変える

恐ろしいほどの切れ味は私を狂喜させた。柵の目に対して直角に切るという事前知識も後から追いついた。これが舌触りを変えるらしい。

箱から出した時の包丁は冷たい感じがして怖かったが、実際に動かしてみれば、私の手と同化して一切逆らうことなく引くことに忠実だった。今まで押したり引いたりしてきたあの動作はなんだったのか。

刺身包丁とわざわざ名前がついている理由。

「こんなに切れるって本当に知らなかった。みて!断面も嘘みたいにキレエ」
「柔らかい食材も、すんなり切れそうだよね」

そう。初めての刺身包丁を記念して手巻き寿司パーティーを企画した。
柵もいくつか用意した。切る感触も違うのだろうか。

「次、白身行ってみる?」