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両刃包丁の蛤刃とは?しのぎ+切り刃とは?特徴やメリットと研ぎ方のコツ

両刃包丁の蛤刃とは?しのぎ+切り刃とは?特徴やメリットと研ぎ方のコツ

「普通の包丁」と呼ばれる多くは両刃包丁であり、三徳・牛刀・筋引きなど家庭用からプロの現場まで幅広く使われる万能包丁です。左右対称の刃構造による安定した切りやすさで、初心者でも扱いやすく、肉・魚・野菜まで幅広い食材に対応でき、切れ味と耐久性のバランスにも優れています。

しかし、同じ両刃包丁でも「蛤刃(はまぐりば)」と「しのぎ+切り刃」という形状の違いによって、切れ味・食材離れ・耐久性に明確な差があることをご存じでしょうか。本記事は、包丁製造の現場を知り尽くす實光刃物の職人であり、研ぎのプロである研ぎ師RYOTAが解説した動画をもとに、通常の両刃包丁の特徴に加え、この2つの形状のメリット・デメリットや用途別の選び方を一歩踏み込んで解説します。

さらに、「両刃包丁の研ぎ方は?」「蛤刃としのぎはどっちが切れる?」「初心者におすすめの形状は?」などの疑問にも実践的に答えます。RYOTAの解説動画とともに読み進めることで、両刃包丁の奥深さと自分に合った一本の選び方がきっと見えてくるでしょう。

両刃包丁とは、左右対称の刃角で作られた万能包丁の総称です。家庭用では三徳包丁やペティナイフ、プロ仕様では牛刀・筋引きなどが代表的な形です。左右対称の角度になっているため、右利きでも左利きでも使える包丁です。

また、まな板に対してまっすぐ落とすように切ることができるため、肉・魚・野菜と幅広い食材に対応できるのが最大の特徴です。家庭用からプロ用までこの汎用性の高さがメリットになり、どの場面でも欠かせない包丁と言えます。

私共のお客様でも、「片刃と両刃どっちがいいの?」という質問が多く聞かれますので、まずは両刃包丁の刃構造と得意な食材、片刃包丁との違いをわかりやすく解説します。

三徳・牛刀・筋引に共通する左右対称の刃構造

両刃包丁は、刃の左右が同じ角度に仕上げられているのが特徴です。これにより、切る際に刃が左右どちらにも流れにくく、真っ直ぐに食材へ入ります。

両刃・片刃の構造説明

両刃包丁のメリット(構造)

・まっすぐ切れる:左右対称のため、切り口がまっすぐで形が崩れにくい
・取り回しやすい:右利き・左利きどちらでも使いやすい
・汎用性が高い:肉・魚・野菜など幅広く対応可能
・代表的な両刃包丁の種類と用途

種類 特徴 主な用途
三徳包丁 刃渡り165〜180mm程度、幅広で先が丸く安全性が高い 肉・魚・野菜のオールラウンド、家庭用
牛刀 刃渡り180〜240mm、三徳包丁に比べて幅が補足、先がとがっている 大きな肉塊、野菜のカット、
筋引き 刃渡り240〜300mm、細長い形状 ローストビーフや生ハムのスライス

両刃包丁が得意な食材と片刃包丁との違い

両刃包丁は「どんな食材でも安定して切れる万能型」です。特に家庭料理や幅広い調理工程で使いやすく、初心者からプロまで支持されています。なんでも1本で料理ができることが両刃包丁の最大の魅力と言えます。

両刃包丁が得意な食材例

・さまざまな野菜や果物の皮むき
・ブロック肉や鶏肉
・魚の切り身
・葉物野菜のカット

片刃包丁との違い(比較表)

項目 両刃包丁 片刃包丁
刃の構造 左右対称 片側だけに刃を付ける
切れ味の性格 バランス型 特化型(刺身・桂剥きなど)
切った面の直進性 高い(曲がりにくい) 片側に流れる傾向あり
食材離れ 普通 良好
初心者向き度 高い 中級〜上級向け

片刃と両刃についてはこちらでも詳しく解説していますので、合わせてごらんください。

【片刃と両刃の違いについて詳しく見る】

蛤刃としのぎ付き両刃包丁の形状と切れ味の違い

両刃・蛤刃としのぎ筋と切り刃の説明

両刃包丁とひとことで言っても、その形状は同じではありません。特に「蛤刃(はまぐりば)」と「しのぎ+切り刃」の2タイプは、見た目から切れ味、研ぎ方、耐久性まで大きく異なります。この違いを理解して選ぶことで、料理の仕上がりや包丁の使い勝手が変わりますので、気を付けてみていきましょう。

蛤刃とは?特徴は丸みが生む耐久性と扱いやすさ

蛤刃の包丁の表 蛤刃の包丁の裏
蛤刃の包丁の表 蛤刃の包丁の裏

蛤刃は、(はまぐりば)と読み、刃の形状がハマグリの貝殻のような曲線になっていることから名づけられた両刃包丁の形です。刃先に向かって丸みを帯びた形状が、独特の切れ味と高い耐久性を生み出します。

構造の特徴

・刃元から刃先にかけて滑らかな曲線を描く断面
・左右対称のため、切り進みが安定
・刃先にわずかな丸みがあり、衝撃を分散

メリット

・耐久性が高い:刃先角度がやや広く、刃こぼれしにくい
・扱いやすい:硬い食材(かぼちゃ、根菜、大きな肉塊)にも対応
・直進性が安定:力を入れても刃がぶれにくい

デメリット

・鋭い切れ味のピークはしのぎ構成より劣る場合がある
・研ぎの難易度がやや高い(研ぎの角度を安定させる必要がある)

蛤刃に向いている食材例

食材の種類 理由
硬い野菜(レンコン、にんじんなど) 刃先が欠けにくく安心して力をかけられる
厚みのある肉 刃の強度で押し切りやすい

しのぎとは?切り刃とは|鋭い切れ味と食材離れの良さ

しのぎ+切り刃の包丁の表 しのぎ+切り刃の包丁の裏
しのぎ+切り刃の包丁の表 しのぎ+切り刃の包丁の裏

「しのぎ(鎬)」とは、刃の平部分と切り刃の境目にある段差のことで、「しのぎ筋」と言われることもあります。また、「きりは(切刃)」とはしのぎ筋から刃先までの角度がある面の呼び名です。しのぎから下の部分を切り刃として角度をつけて研ぐ構造になっています。刺身包丁や出刃包丁などの和包丁と同じタイプの両刃包丁になっており、鋭い切れ味と美しい切断面を生みやすいのが最大の魅力です。

構造の特徴

・刃の平面と切り刃の境界に明確なしのぎ線
・切り刃部分は平面に近く、砥石にベタっと当てやすい
・左右対称の切り刃で角度管理がしやすい

メリット

・鋭い切れ味:しのぎから刃先までの角度が一定で、薄く仕上げやすい
・食材離れが良い:切るときに食材と包丁が引っ付きにくく、食材が包丁にくっつきにくい
・研ぎやすい:切り刃を砥石に平らに当てられるため、初心者でも角度を保ちやすい

デメリット

・刃先が鋭くなる分、耐久性は蛤刃よりやや劣る
・硬い食材を強く押し切ると刃こぼれのリスクがある

しのぎ+切り刃に向いている食材例

食材の種類 理由
トマトやきゅうり 薄い皮でも引っかからずスムーズに切れる
柔らかい肉・薄切り肉 切れ味が活き、繊維を潰さず切れる

どちらの両刃包丁を選ぶべきか|用途別おすすめと比較表

蛤刃としのぎ+切り刃は、同じ両刃包丁でも「何を切るか」「どんな使い方をするか」によって向き不向きがはっきり分かれます。選び方のポイントは、切れ味の鋭さを優先するのか、それとも耐久性と扱いやすさを重視するのかです。

・硬い食材や大きな食材をよく扱う方
 → 蛤刃がおすすめ。刃こぼれに強く、多少の力をかけても安定して切れます。

・薄切りなど見た目の美しさを重視する方
 → しのぎ+切り刃がおすすめ。切断面がきれいで、食材離れも良く作業効率が上がります。

・研ぎに自信がない初心者の方
 → しのぎ+切り刃の方が、砥石への当て方がわかりやすく角度管理もしやすいです。

蛤刃としのぎ+切り刃の比較表

項目 蛤刃 しのぎ+切り刃
切れ味 良好(耐久寄り) 非常に鋭い
耐久性 高い・長切れ(長持ち) 中程度(刃先が薄いため欠けやすくなる)
食材離れ 普通 良好
研ぎやすさ やや難しい(角度を自分で決める必要あり) 比較的簡単(切り刃の角度で当てる)
向いている用途 硬い野菜や大きな肉 薄切り、野菜の細工切り
向いている人 研ぎを頻繁にせず、色んな食材を切る人 繊細な切れ味と食材の仕上がりにこだわりがある人

補足として付け加えると、一般的に市販されている包丁の多くは蛤刃で作られており、両刃包丁ではしのぎがあるタイプは少数派です。しかし、動画内でも触れていますが、蛤刃の包丁は自分で切り刃を付けて研ぐことも可能です。

こうして自分の包丁を研ぎながら使い続けることは、包丁と長年良い関係を築く大切なポイントです。研ぎについてさらに学びたい方は、研ぎ師RYOTAによる研ぎ方動画もぜひご覧ください。

【JIKKOと研ぎ師RYOTAの動画をもっと見る】

プロが教える両刃包丁の研ぎ方のコツと研ぎやすさの比較

両刃包丁の研ぎ方にはいくつかのアプローチがあり、刃の形状や用途によって適した方法が異なります。特に「小刃付け」「切り刃ありの研ぎ」「蛤刃研ぎ」は、それぞれ刃先の性格を変える重要な技法です。本章では、各研ぎ方の特徴やコツ、そして初心者が選びやすい形状について、實光刃物の研ぎ師RYOTAの経験をもとに解説します。

小刃付け・切り刃ありの研ぎ・蛤刃研ぎの違いとコツ

  1. 小刃付け

・特徴:刃先のごく先端部分にわずかな角度をつけて研ぎ、強度を高める方法。
・メリット:耐久性が向上し、刃こぼれしにくくなる。家庭用や硬い食材を扱う場面に最適。
・研ぎ方のコツ:通常よりやや角度を立て、軽い力で刃先だけを研ぐ。片側数回ずつで十分。

  1. 切り刃ありの研ぎ(しのぎ+切り刃構成)

・特徴:しのぎ線から刃先までを平面に近い形で仕上げ、薄く鋭い切れ味を出す。
・メリット:食材離れが良く、断面が美しく仕上がる。刺身や野菜の薄切りに最適
・研ぎ方のコツ:切り刃面を砥石にぴったり当て、一定の角度を保つ。力をかけすぎず、面全体を均一に削る。

  1. 蛤刃研ぎ

・特徴:刃元から刃先にかけて緩やかな曲面をつける研ぎ方。耐久性と切れ味を両立できる。
・メリット:硬い食材にも対応でき、刃こぼれしにくい。長時間の作業でも安定感がある。
・研ぎ方のコツ:角度を固定しすぎず、砥石上で少しずつ当て位置を変え、刃の曲面を保つように研ぐ。

比較表:研ぎ方の特徴

研ぎ方 切れ味 耐久性 食材離れ 難易度 向いている用途
小刃付け やや鋭い 高い 普通 初級〜中級 家庭用全般、硬い食材
切り刃あり 非常に鋭い 中程度 良好 初級〜中級 刺身、薄切り野菜
蛤刃研ぎ 良好 高い 普通 中級〜上級 大型食材、硬い野菜・肉

實光刃物『秘宝シリーズ』蛤刃・しのぎ付き包丁の特徴

動画で紹介している秘宝シリーズは、實光刃物が100年以上の歴史と職人技を結集して生み出したオリジナルブランドです。スタイリッシュな形状と使いやすさを追求した“秘宝型”デザインが特徴で、使用素材や刃形により、「蛤刃タイプ(キング)」と「しのぎ付きタイプ(クイーン)」など、たくさんのスタイルが展開されています。 

秘宝「キング」(蛤刃タイプ)

【秘宝】キング三徳包丁

・構造と鋼材
コアレス構造(VG10+VG2積層)による高い強度と切れ味、耐久性を両立しています
・刃形
蛤刃の丸みを活かした形状で、硬い食材も安心して切れ、切れ味が長持ちします。コアレスによる層模様が美しく、ビジュアルでも魅力的です

秘宝「クイーン」(しのぎ付きタイプ)

【秘宝】クイーン三徳包丁

・鋼材
コバルトスペシャル鋼を使用し、切れ味の持ちが非常に良いのが特長です。
・形状
明確なしのぎ線と切り刃構造で、刃が食材に鋭く入る感覚と食材離れの良さを兼ね備えています。研ぎやすさも重視されており、しのぎがある構成を活かしやすい形状です。

比較表:秘宝シリーズ「キング」と「クイーン」

モデル名 鋼材・構造 刃形 特徴
キング(三徳/蛤刃) コアレス(VG10+VG2積層) 蛤刃 高耐久、切れ味長持ち、美しい積層模様
クイーン(三徳/しのぎ付き) コバルトスペシャル しのぎ+切り刃 鋭い切れ味、食材離れ良好、研ぎやすい

【實光刃物の秘宝シリーズをもっと見る】

形状と研ぎ方で変わる、両刃包丁との最高の付き合い方

両刃包丁は、日常使いの万能さと扱いやすさで、多くの家庭やプロの現場で愛用されています。しかし、同じ両刃でも「蛤刃」と「しのぎ+切り刃」では、その切れ味や耐久性、研ぎ方のポイントが大きく異なります。形状ごとの特性を理解し、自分の料理スタイルに合った研ぎ方を身につけることは、包丁を長く使いこなすための最大の秘訣です。

あなたもぜひ、自分に合った両刃包丁と研ぎ方を見つけ、最高の切れ味と長い付き合いしていただきたいと思っています。

本記事で紹介した「秘宝シリーズ」をはじめ、デザインや形状が様々な鋼材から選べる實光の両刃包丁から、あなたに合う1本をぜひお選びください。

 實光刃物 公式ホームページはこちら

また、 本記事の元となった研ぎ師RYOTAによる解説動画はこちらからご覧いただけます。両刃包丁の形状と研ぎ方の違いを、映像でよりわかりやすく学べます。

實光刃物 四代目:實光俊行(じっこう としゆき)

實光刃物 四代目:實光俊行(じっこう としゆき)
「實光刃物(じっこうはもの)」は大阪の堺で明治33年に創業し、包丁(刃物)の製造と販売をしています。一期一会の精神で、お客様との瞬間を大切に。切れ味へのこだわりを胸に、日々技術の向上に励んでいます。技術の継承と共に、将来は世界中で愛される堺包丁のブランドを築き上げる夢を抱いています。
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